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Café ゆうじ屋 実方裕二さん

 
 

ゆうじさん

 

これからケーキを売りに行くゆうじさん。Caféゆうじ屋の前で

 
 
 

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ゆうじさんは車いすにケーキの入った鞄をかけ、販売のための看板をつけて、一人でやってきた。
 
 
 
販売中のゆうじさん

 
 
 
三軒茶屋のマクドナルドの前で待ち合わせをして一緒に歩いていたら、大学生の男性に「チーズケーキをください」と、私が声をかけられた。

会ってまだ数分しかたっていなくて何もわからないので、こちらの方に聞いてくださいと答えると、男性は一瞬「えっ。そうなの?」というような顔をしたけれど、直接ゆうじさんとコミュニケーションをとりはじめた。

ケーキを買いたい人は、言語障害の重いゆうじさんと直接コミュニケーションをとらなければならない。

こんな販売の仕方があるんだと、ちょっと驚いた。
 
 
 

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ゆうじさんは三軒茶屋で、「ゆうじ屋」というcaféを経営している。

ふわふわのシフォンケーキがうりで、キッシュやカレーなども美味しい。
 
 
 

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オープンした当初は僕が考えたレシピをもとに、お店のスタッフが作っていた。

「言葉で作る料理人」と自分のことを伝えていた時もあったけれど、今はちょっと違うかも。スタッフのアイディアなども取り入れて、お店のメニューの一部は僕のレシピではない。

今は「料理人」より「販売」の方があっているのかな。

 
 
 
ゆうじさんは、お店でスタッフに作ってもらったケーキを車いすの後ろの鞄につんで、町やいろいろな施設へ売りにいく。

10年ぐらい前から、母校である特別支援学校へも、週に2〜3回、放課後にケーキを売りに行っている。
 
 
 

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僕が学校に一人で売りに行くってことは、買ってくれる人に鞄からケーキを出してもらって、おつりをとってもらう。「自分でできないのに売るな」そういう反応が返ってくるのかなと思っていた。

 
 
 
ゆうじさんが通っていた時代の特別支援学校では、何でも自分でやり、人の手を借りないことが求められた。

迷いながらも、おそるおそる車いすにケーキを入れた鞄をかけ、夕方を狙って母校に入っていった。

小学部の職員室に行ってみると、若い女性の先生が出てきて「あれー、ケーキ売ってるんですか?」と驚かれた。

当時いた先生たちはもういなかった。
 
 

僕が通っていたころとは違い、出来ないことを介助するのが当たり前という感じになっていた。

でも、障害者であっても自分で生活を組み立てて責任を持って生きることができる、本当に大切な支援とは、そういう「自立生活」を目指すものだというイメージは、先生たちの中にほとんどなかった。

そもそも僕が一人暮らしをしているというと驚く人も多かった。

やはり昔と変わっていないんだなと痛感した。

 
 
「僕がこうやってケーキを売ることで、重度の障害があっても生活を作っていける可能性があるんだと伝えていけるし、伝える責任がある。」

ゆうじさんはそう考えている。
 
 
 
ゆうじさんにはもう一つの顔がある。それはミュージシャンとしての顔。
 
 
 

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大学のイベントでのライブ

 
 
 
20代のころからバンド活動をしていたけれど、その時は言語障害のことが気になって思い切り歌えなかった。

今年に入ってはじめたバンド「ラブエロピース」のライブでは思いっきり歌い叫び、車いすからずり落ちそうになるほど激しく動きまわる。
 
 
 

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実は私もライブを見て、その激しさにちょっとびっくりした。

歌になって語られるストレートな言葉を聞きながら、なんだか不思議な開放感を感じている自分がいた。

 
 
 

Café ゆうじ屋

http://www.yuujiya.net/cafe_top.html
東京都世田谷区三軒茶屋2−14−22−102
03−3418−6671
月・水:15時〜21時  木・金・土:15時〜23時  日:14時〜20時
定休日:火曜日

ケーキ販売の問い合わせは実方さんの携帯電話 080−5000−7029まで。

ラブエロピースのライブの動画や情報はfacebook(こちら)で見ることができます。
 
 
 

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