ごあいさつ 『わたし』のはなし 『フクシ』のはなし 見えない障害バッジ みんなのひろば 編集室

フクシってなんなの?会議

障害ってなんなの?

 
みなさん、こんばんは。そしてはじめまして。
社会人2年め、まだまだ新米社会人のハナです。

この連載は、くまくんに頼まれた私・ハナが社会福祉士のつざき姉さんをご飯に誘い出して、おいしいものを食べながら福祉について教えてもらっちゃおう!という一石二鳥の企画です。

記念すべき第1回は、新宿ルミネ、「和の膳 Tetoshio」。
ソファー席に陣どって、さっそくスタートです!

ハナ では、つざき姉さん。
よろしくお願いします。
つざき はーい。よろしくね。
ハナ では、えーと。
えーっと。
福祉って・・・あのー・・・。

なんですか?

つざき 一言じゃ言えないな…。

はは、これじゃ原稿にならないね。

でもまあ、そうよね。そこからよね。

ただ「福祉」ってひとことで言っても範囲が広くてね。
高齢者福祉とか、児童福祉とか、障害者福祉とか、非行や犯罪とか司法にかかわる福祉もあるんだよ。

「わたしのフクシ。」は「見えない障害」からはじまってるので、障害者福祉を入り口に話そうと思うけど、いいかな?

ハナ はい。じゃあ、その「障害者福祉ってなに?」ってことからお願いします。
つざき 実は私は高齢者福祉一筋で、障害者福祉は専門じゃないのだ。
でも、私が知る限りでも、障害者福祉の概念は、この30年でずいぶんと変わってきてるんだよ。

私が大学に入って福祉の勉強を始めた年が国際障害者年で1981年。
当時は、まだ福祉施設は山里離れたところにあることが多くて、障害者は離れたところに隔離している、という感じだったな。

実は、私の親が脳性マヒの子どもさんとかかわっていて、就職の時に差別を受けて、私が中学生の時に、自殺したの。一生懸命努力したのに、障害があるからという理由で…。

だから、大学に入学して、国際障害者年の発想や当時いわれ始めたノーマライゼーションの発想の話は正直鳥肌立つくらいの感動だったよ。これすごいよ! って。

ノーマライゼーションってね、障害者は助けられる存在ではなく、障害者も社会に参加をしていくんだ、平等なんだ。いろんな人がいて当たり前なんだ、という発想なんだけど、それにとても惹かれたの。これはまたちゃんと話するね。

で、そのときからみてもずっと、福祉は進化しつづけてる。
そしてその進化はね、障害ってなにか、の視点の進化でもあるの。

ハナ 障害ってなにか、それ自体が変化し続けているってことですか? 今も?
つざき そう。
ハナちゃん、突然だけど、障害ってどういうことだと思う?
ハナ え? うーん・・・。
手足が動かないとか、目が見えないとか、そういうことかなぁ。
つざき そうね、そこが出発点。

障害って何を指すかということは、(今はまた解釈が少し違うんだけれど)国際障害者年の頃言われていた障害分類の話がわかりやすいからしてみるね。

最初のレベルは、「機能・形態障害」(impairment)。

視力がないとか、四肢の自由がきかない、とか。
病気によるもの、事故によるもの全てだけれど、その機能が欠如とか支障があるということ。認知症の脳の萎縮なんかもそうだよね。

ハナ それって、お医者さんの領域ですよね。
つざき うん。医学の力で、この障害は軽減できる。もちろん限界もあるけど。

それから、例えばはなちゃんのおじいちゃんは車椅子だよね。歩けないという機能障害があることで、階段は上れなかったりするでしょ。外出も制限されたり、お風呂も一人では難しい。そういうふうに、機能障害によって、食事や排泄などの動作がうまくできなくなったり、コミュニケーションがうまくいかないくなるとか、生活に障害が起きてくる。

そのことを2つめのレベル「能力障害」(disability)というんだ。これって車椅子とかの福祉用具などを使うとその生活を改善できることが多いよ。

ハナ 最近は、いろんなタイプの車椅子があるらしいですね。
つざき うん、そうなんだ。
能力障害は、その人の生活に関する能力に関係しているの。例えば、たたみの生活だと膝に痛みのある人は正座ができずにしんどいけど、椅子式の生活だと特に気にならないよね。その人そのひとの生活にかかわってくるんだよね。
ハナ だから、車椅子ひとつとっても、屋内用・屋外用、それからスポーツ用、とか、いろんなタイプのものが増えてきているんですね。
そっかぁ、なるほどなぁ。そうすると、能力障害を補って生活しやすくすることが福祉ってことなのかなぁ。
つざき 待ってね。もうひとつ。

もしもハナちゃんに大きな機能障害があって、でも日常の全部をドラえもんが手伝ってくれたら、それでハナちゃんは問題無し?

ハナ うーん。生きてはいけると思うけど・・・。 でも・・・。
つざき どんな問題がありそう?
ハナ やっぱり、仕事のことかなぁ。今の会社で仕事を続けるのは難しい気がするなぁ。そんな環境じゃないもん。辞めるしかなくなっちゃう。あとは、旅行に行けないかもしれないし、ディズニーランドとか行ったら、乗れるものってどのくらいあるんだろう・・・。
つざき その仕事を続けたり、趣味にも障害があるわよね。
それが3つめのレベル。ハンデイキャップ(handicap、社会的不利)があるということなの。
ハナ それも私の障害になっちゃうんですか? 会社の仕事がキツいのと、私とは関係ない気がするけどなぁ。
つざき 確かに個人の内的な障害ではないけれど、社会と関わる中でこそ障害になる。
だからそのことを、社会的不利と呼んでるの。
ハナ そっかぁ。。
でもその障害をなくすのって、難しそう。
だって、仕方ないことだっていっぱいあるし・・・。

ディズニーランドで全部のアトラクションに乗るのはきっと無理だと思うし、旅行も行けない所はあるだろうし。ふつーの人みたいに仕事するのだって・・・。

つざき ハナちゃん、そこ、大事。「ふつーの人みたい」のとこ。

ハナちゃんは今の会社で頑張ってるでしょう?
これでもし、もっと大きい仕事をしたくて、上のポジションにつきたいとするじゃない。そのとき社長に「君の能力は認めるが、女性だからダメ。」って言われたら?

ハナ えー?! それは女性差別ですよ。
つざき だって女性は男ほど体力ないし、深夜残業させられないし、うちのマネージャーはみんな男性でそれがこの会社では普通だから、仕方ないことなんだ。って言われたら。
それでも差別?
ハナ 間違いなく差別です!
つざき じゃあ、うちの会社にはエレベーターがないので、車椅子の人は雇いません。っていうのは?
ハナ それは、仕方な・・・、ん? あれれ?
つざき 仕方なくあきらめなきゃいけなかったことって、人間の長い歴史には、いっぱいあったよね。

奴隷の子供に生まれたんだからしかたない。
黒人に生まれたんだからしかたない。
女性なんだからしかたない。

障害者なんだからしかたない?

ハナ うーん。。
「仕方ない」、じゃいけない気がしてきました。
「仕方ない」って言っちゃうことって、もしかして差別なのかな。。
つざき イコールではないよ(笑。

でも「仕方ない」っていう状況は、その国の文化だったり、社会的な環境に対する挫折とかあきらめとかだったりすることが多いよね。
日本の中の女性への見方とか、さっきの正座の話だって、畳文化の日本ならではの問題。私たちが、「当たり前」とか「普通」とかいっていることは、歴史の流れの中でつくられているんだよね。
簡単に仕方ないっていっていることをもう少し丁寧にみてみることが必要かもね。

ハナ ここまでが「ふつー」で、その外に出ちゃった人は、「仕方ない」・・・。
その「仕方ない」が、社会的不利をつくるんですね。
つざき そう。
だから社会的不利には、人のもののとらえ方が影響してくるよね。
その時代や社会の考え方や、価値観、評価とかから生まれるけど、その考えが変わることで、ずいぶん障害を減らすことができる。

国際障害者年の頃は、駅の点字ブロックもまだ少なかったし、ましてや駅に「なんでわざわざエレベーターなんて。」という時代だった。別に今に満足しているわけではないけれど、これでずいぶん変わってはきているんだよ。

私は、与えられた病気は治らなかったとしても、社会的不利を減らすことでその人の生活が変わることにとっても魅力を感じたよ。

ハナ たしかに、車椅子で行ってもなんの問題もなく応対してくれるレストランも増えてきてますよね。でも、やっぱりまだまだかなぁ。
そういえば、せちろうさんが「日本社会は度量が狭い」って言ってました。。

そうか!
福祉が目指すのって、度量の広い社会をつくることなんですね。
つざき姉さん、度量の広い社会ってどんな社会ですか?

つざき ちょっとその前に…。

実は、障害の分類は、まだまだ先があるのだ。
今回の話は、私が20代の頃のお話。進化の過程を話さないとねっ。
まだまだ先が長いよ~。

ハナ はーい。
ハナはもう頭の中がパンクしそうだから、続きは今度教えてくださ~い。
つざき姉さん、今度は何を食べに行きましょーか?

 
 

カテゴリー: フクシってなんなの?会議   パーマリンク

>> お問い合わせはこちら copyright (C) 2011 わたしのフクシ。編集部