今日ユウタのお腹に複数のアザを見つけた。
聞くと、昨日、ユウタよりも下の学年の男の子二人に、お腹を思いきり殴られたとの事。
これまでも、外で遊んでいる時に身体の特徴をからかわれて殴られたり蹴られたり、そんな話をユウタからは何度か聞いていたけど、こんなにアザになる程強く殴られたりしていたなんて。私はショックだった。
『相手はまだ小さいし、ユウタが病気で太っている事も分かっていないし、悪ふざけしているだけで手加減がまだ分からないだけなんだよ。』
と、ユウタは言って、なんでも無いような顔をしていた。
ユウタの、その、まるで慣れた感じとか、ただそんなふうに私に振舞ってみせているだけといった感じがたまらなく悲しかった。
ユウタには頭(脳室)から首、首からお腹にかけて、水頭症のシャントのチューブ(*1)が入っている。これはユウタにとっては、もう一生取り外せないもの。大切に付き合っていかなくてはいけない。
三年くらい前に首辺りの、そのチューブが外れてユウタが意識を無くし救急車で運ばれた経験がある。その時、その救急車の中で、もしかしたらこのままユウタが死ぬんじゃないかと本気で思った。
救急隊の方が『ユウタ君!ユウタ君!聞こえますか!』と、かなり大きな声で問いかけ続けてる光景が今でもまだ鮮明に思い浮かぶくらい、私にとってはまだまだ笑いながら話せる過去話にはなっていない。
だから、私も少し神経質なのかもしれないけど、例えば、シャントのチューブが通っている部分である腹部や首や肩付近を強くぶつけたりしてしまった時に、命にかかわる事故に繋がるのではないかと、つい考えてしまう。
そうやって深く想像すると怖くなる。
生きていれば誰でも沢山のヒヤヒヤがあるんだけどね。
さっきユウタが
『人に叩かれたり殴られたりするよりも、もっと痛くて悲しい事がある』
って言ってた。
私はそれを聞いて数秒固まった。
気を抜いたら泣きそうだった。
こんな事を言って、ユウタが何だかかっこいい事を言っているように聞こえるかもしれないけど、そうではなくて。
私には見えない所でもユウタがもっともっと深く傷ついてきているのだろうと、改めて感じたから。見える傷と見えない傷が同時に見えたような気がしたから。感じたから。
だけど少し思う事もあった。
そんな悲しさの裏側で一年前のユウタを思うと、すごく成長しているんだなぁって気がついたりもする。
感情抑制も出来るようになってきたじゃん!
うんと長い目でみれば、こんな色んな出来事も無駄にはなっていない…のかもしれない。
わかんないけど。自信ないけど。
ただどうしても私には、ユウタの病気も無駄では無かった、とまでは思えないんだけどね。
そこまでは、まだまだ。きっといつまでも。
お母さん側である私の気持ちとしては、多分一生難しいと思うから。
そんなふうにしか思えない私を私が受け入れられたら、また違うのかもしれないけど。
*1: 水頭症のシャントのチューブ
ユウタは脳腫瘍により脳脊髄液が頭の内側に留まってしまう水頭症という病気を併発していた為、脳脊髄液の流れの一部分から、シャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、お腹へ流す仕組みである脳室ム腹腔シャント(VPシャント)を使って脳脊髄液を流しています。