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困ってるズ!

金子くんの巻

はじめまして!

「困ってるズ!」編集スタッフの金子と申します。
普段は大学で経済学を勉強しつつ、シノドスで編集業務をしています。

実はぼくも「困ってるズ!」のひとりなんです。

今回は第一回ということで、自己紹介を兼ねて、
ぼくがどういった「困ってるズ!」なのかを書いてみたいと思います。

【私はこんな、困ってるズ!】

ぼくは10代まではずっと「健常者」でした。
しかし21歳になったばかりの8月に、右膝に悪性腫瘍がみつかります。

2月頃から、ときおり目が覚めると右膝が痛むようになりました。
両膝をなでてみると、どうも右膝の一部が膨らんでいる気がします。
春休みが終わる前にと、急いで地元の整形外科に外来を受けますが、
成長痛の一種とのことで、痛み止めの貼り薬を処方されました。

しかし痛みが弱まることはなく、膨らみも大きくなっていきます。
再び診察を受けにいくと、
レントゲンに気になる影があるとのことで、大学病院を紹介されました。

大学病院で精密検査を受けて、ようやく病名が発覚します。
「骨肉腫」でした。
そこから1年半ほどの入院生活が始まります。

「骨肉腫」という病気に、聞き覚えのある方がいらっしゃるかもしれません。
そう、ヤングジャンプで連載されている井上雄彦さんの『リアル』というマンガで、
主人公の戸川清春が同じ病気に罹っていました。
ぼくも、主治医に病名を知らされたときに、
「あぁ、あの病気か」と『リアル』を思い浮かべました。

戸川清春は、右膝関節から下を切断し、
車椅子と義足を使って生活を送っています。

ぼくの場合は、切断ではなく、
右膝に人工関節をいれることになりました。
またある時期まで、杖をついて歩いていました。

同じ病気でも発症個所や治療法が異なるため、
みながみな同じ障碍を抱えるわけではありません。

人工関節をいれた場合でも、
健常者とほとんど能力が変わらない人もいれば、
ぼくのように、術後に腱の力が弱まってしまったために、
自力で足をまっすぐに伸ばせない人もいます。

ですからぼくはいつも、
関節を固定するための装具をつけて歩行しています。

足を曲げることに制限があるため、
例えば、正座をすることはできません。
正座は、思っている以上に腱にプレッシャーをかけるらしいのです。
ぼくの場合、医師から、120度以上曲げることは禁止されているので、
大失敗をやらかしたときに、編集長のお二方に土下座することができません。

ちなみに現在は、特に治療を行っておらず、
ふた月に一回ほどの定期検査のみを行っております。

【私はこんな風に、困ってるズ!】

足を曲げたり伸ばしたりすることに制限があるぼくの天敵は

・階段、エスカレーター、エレベーター

です。

退院してすぐに、東日本大震災と原発事故が発生しました。
そのおかげで、あちこちで停電と節電が起きたのですが、
そのときに強く実感したのは、電気はとても大切だ、ということでした。
特に、エスカレーターとエレベーターが。

●エスカレーターのお話

当時、都心では駅のエスカレーターが止められているところが多くありました。
それは「節電のため」です。
都内の煩雑とした駅ではエレベーターが見つからないことも多くあり、しかもたいてい、ホームの端など、ちょっと歩かなくてはならないところにあったりします。

そんなときにエスカレーターを使えないのはとても困ります。
駅によってはエスカレーターが設置されていないところもありますし。

階段を上り下りするとき、バランスをとるだけではなく、前後の気配にも気をつけなくてはなりません。
多くの人は、当たり前に階段を上り下りできるので、もの凄い勢いで人と人のあいだを縫っていきます。
とっさによけることが難しいぼくは、その度にひやりとしています。

またエスカレーターを設置している駅でも、多くは上りか下りの片方しか設置していません。
そして大概が上りエスカレーターとなっています。
でも、ぼくは、下りのほうがバランスを取るのが難しくて大変です。

みなさんも、階段を勢いよく上り下りしてみていただければ、
意外と上るより下るほうがバランスをとるのが難しいことがわかっていただけると思います。

バリアフリーって、まだまだ全然進んでなかったんだなと、自分が「困ってるズ!」になってから痛感しました。

●和式トイレ

ぼくは和式トイレを使えません。
和式トイレの場合、膝を曲げきらなくてはならないので、ぼくの身体では使うことが無理なんです。
一度、試しに空気椅子状態で使ってみたのですが、
身体中に力が入ってしまいトイレどころではありませんでした。

いまではもうほとんど和式トイレのみの施設はありませんが、
たまに昔ながらの居酒屋に行くと、和式トイレしかないことがあります。
居酒屋で、トイレが使えないのは致命的です。

【こうしたときに、助かったズ!】

日常生活の中では、ぼくはあまり、具体的な「親切」を必要とはしていません。

ただ、例えば階段など不安定な場所で乱暴に歩かないで欲しいだとか、
街中で携帯電話をみながら歩かないで欲しいといった思いはあります。

先ほどエスカレーターのことを書きました。
ぼくは上りよりも下りのエスカレーターを必要としていますが、
きっと上りエスカレーターを必要としているかたも多くいらっしゃることと思います。
ですから、「上りではなく下りを」とは言わないので、できれば両方あるといいのにな、と思います。

様々な障碍を抱えている人だけでなく、同じような障碍を抱えている人ですら、
それぞれに困っていることが違っています。

まずはなにより、そのことを皆さんが知っていてくださるととても助かります。
「困ってるズ!」ではそういった、なかなか気がつけないようなことを、
皆さんから聴かせていただきたい、そして声を出していきたいと思っています。
よろしくお願いします。
 
 
 


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イラスト: こっぺぱん
大阪在住の高校3年生。
高校1年生の夏、突発性難聴とメニエール病の当事者に。
進路のこととか受験のこととか…。
なので、ときどき登場してくれる、かも、です。
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