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こころの生活。

生活の変わり目

 
僕の職業は鍼灸師。

今は仕事から遠ざかって生活しています。
自分が病気になるなんて、こんなにも早く病気になるなんて、いろんなことを思います。

最近では、わたしのフクシ。の仕事を手伝わせてもらっているけれど、Facebookページの運営と、見えない障害バッジの配送。健康な人だったら、仕事に行く前に済ませられる程度のことしか手伝えていません。もっともっと出来ることがあればいいんだけど、それは今の自分にはすごく難しいこと。

やりたいことは沢山沢山あったし、今だってやりたいと思うことはあるけれど、そのひとつひとつが、ものすごく遠い。うーん、くやしいな。

元気印の自分が思いがけず病気を抱えてしまって今に至るまでのこと、これから時間をかけてゆっくり書いていこうと思います。パンを食べながら、コーヒーを飲みながら、音楽を流しながら、気が向いたときにお付き合い下さい。
 
 

むかしむかしのおはなし。

小さい頃から本が好きで、学校や地元にある図書館は本棚のような存在でした。
外でどろんこになって遊びまわるのが一番楽しかったけど、本の中にある知らない世界に触れるのも好きでした。のん気な性格は今でも変わらないけど、十代の後半にスイッチが入った時期があって、その時間があったおかげで、自分でもびっくりするくらい楽しい時間を過ごしてこられたように思います。

高校の部活でテニス部のキャプテンをやって味わった苦い経験や、何をしたらいいのか分からない時に、やった方がいいと思うことに、ただがむしゃらになる。それを積み重ねたことで得た自信や信頼。いろんなものが礎となって、自分の中に芽生えたものがありました。
やる気、勇気、根気、とにかくいろんなものが身体中から湧き出すような感覚でした。自分の中にある可能性を見つけて、それを楽しんでいた感じ。

18歳のときに心に決めた目標が、「苦労をしよう」でした。

とにかく苦労して自分を成長させよう。それしか考えてなかったと思います。苦しいことを味わう大切さ、面白さを知って、やればなんでも出来る、そう思って笑っていました。

そんな自分の第一歩は、進学をやめること。
高校を卒業後、中国から来ていた中医の先生の下で働かせてもらうことにしたんです。東洋医学のことなんて何ひとつ知りませんでしたが、ただ惹かれるがまま飛び込んだ自分がいました。
 
 

 
 
そこは、山々に囲まれた小さな職場。生まれ育った東京とはまったく違って、自然が豊か。何もなかったけれど、何もなくて好き。とても気持ちのいいところでした。

やること見るものが、初めて知ることばかりの仕事。
東洋医学の世界は西洋医学にくらべて、目には見えないものを感じとる感覚が大事なので、目で見て偸む(ぬすむ)しかないことが沢山ありました。

辛いこともあったけど、充実した時間や出逢った人たちは素敵な人ばかり。めぐまれた時間、素晴らしい師を得て、医学の道を志すことに決めました。

それから東京に戻って新しい職場を見つけ、2つの専門学校に通い始めました。2年間培ったことの地固めと、見識を広めていくきっかけを探すようになったんです。
 
 

 
 
ちょうどその頃からです。
20歳の冬、ここが僕の人生の岐路。

温泉施設の清掃、駅の売店、保育園の保育補助、図書館司書のバイトをしながら鍼灸の学校に通っていました。

何が原因なのかは今でも分かっていませんが、清掃で使っていた業務用の薬剤が強すぎたのかもしれません。体温があがったり汗をかくと全身に発疹が出るようになりました。

ことあるたびに真っ赤に腫れ上がる身体、思いがけない身体の変化に戸惑ったのをよく覚えています。全身の発疹は、元々動物にアレルギーを持っていた自分でさえインパクトが大きい症状でした。

かゆいし、見た目はすごいし、疲労感もどっとくる。
病院をいくつかまわったけど原因にはたどりつかない。
薬で症状を抑えて、身体を動かさないようにするしかない。

運動なんてもってのほか。大好きな運動が出来なくなった…。
今となっては大したことではないけれど、この頃の自分には目の前が真っ暗になるような出来事でした。

動かなくても緊張すれば発疹が出ました。辛いものはもちろん、食事の制限も結構あって、暖房を効かせている鍼の実習室にも入れなくなりました(単位がとれない…、致命的!)。

これが僕の始まりでした。

病院にいって検査をしても原因が見つからない。
制限が制限を生んでいるような状態に、ただただ困惑していたのをよく覚えています。自分の身体に何が起きているんだろう。そればかりが頭に浮かんでは消えて、浮かんでは消えました。
 
 
当たり前だった健康が、あっという間に失われていく。
それはそれはすごいスピードでした。あれよあれよと生活が形を変えていく。
 
 
バイトをやめなくちゃいけなかったり、学業に支障が出たり、今思い返すとちょっと懐かしい気もしますが、この頃には一大事。
健康って生まれながらに与えられている事がほとんどだから、それがなくなったときに驚くんですよね。健康ってすごいんだなって。すごかったんだなって。

この頃の自分は、気持ちが動揺してしまって、ジタバタしたり抗う余裕もなかったです。

こういう時って地震が起きたときと似てるのかな。
僕はそんな感じでした。
 

ごーし

 

 

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高櫻 剛史

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