ごあいさつ 『わたし』のはなし 『フクシ』のはなし 見えない障害バッジ みんなのひろば 編集室

あたらしい風

運動会 ~ 幼稚園編 ~

 
自閉ッ子チキボンの運動会の成長 ~ 幼稚園編 ~
No.100(2011年6月22日発行)より
 
 
今年、小学4年生になった自閉ッ子チキボンはこの春で7度の運動会を経験しました。
この行事嫌いだった自閉ッ子の、毎年毎年、親も先生も周りの人もハラハラドキドキで笑いあり涙ありで挑んできた運動会の様子をまとめてみました。
 

年少さんの無邪気だった運動会

チキボンは3月生まれ。年少さんの秋の運動会のときはまだ3才。

この頃はまだ自閉症児である診断は受けていなかったですが、言葉も殆どなく、聴覚過敏で音楽・歌・朝の会などは園長室に逃げて参加しない子でした。
接触過敏も酷く、汚れる事を嫌うためグランドに腰を降ろす事もありません。
運動会の練習はもちろん参加せず、皆の練習を遠目で見ながら一人自由気ままに遊んで、たまに練習に入ったと思ったら先生の真似をしていたそうです。

そして本番。
一人おかしな行動して目立つし、お遊戯は先生の真似をして後ろ向きで行進する所から、皆の前に立っているかと思えば皆の輪の中にも入らずあくまでも先生になりきっていました…。
そこまでは良かった。
その後のバルーン体操では一人バルーンの中に入っては逃走…
かけっこは意味わからず適当に参加…
ラストは疲れてしまってずっと座り込んでいました。
まだメチャグチャでも無邪気でかわいいと思われた年少さんの運動会でした。
 

何が起こったかわからなかった年中さんの運動会

朝から慌ただしいいつもと違う雰囲気に機嫌も悪く、本番は泣きっぱなしのチキボン。
まったくと言って良いほど行進からお遊戯も参加せずでした。

がっかりして帰り、次の日に母子センターの検診で【広汎性発達障害】と診断されました。
「そっか~…チキボンは自閉症やったんか~…」と、行事が嫌いな事を納得しました。
ちなみにこの年に行われた生活発表会でも衣裳は着ないし舞台に上がる事もありませんでした…。
 

年長さん、涙涙の運動会

去年まったく本番参加しない…という、悲しい運動会に終わったけど、行事全般苦手である自閉症の特性を踏まえ担任の先生や加配(*通常より教員を多く配置すること)の先生、というか先生全員でしょうね、身内と共にチキボンの運動会の対策を練り、園と連携して取り組んできました。

その中でも大事なのは、まず【幼稚園に行くこと】でした。
いつもと流れの違う幼稚園、練習がいやで「幼稚園行きたくない」という時期がありました。
チキボンの好きなポケモンや恐竜のお弁当作ったりして気を引く作戦で幼稚園に行く様になったものの、練習はしない事の方が多かった様です。

本番は近くの小学校で行われるため【いつもと違う事】が苦手なチキボンをその小学校に何度も連れて行き、「本番はココでするんですよ」と言い続け、当日はチキボン万全のコンディションとモチベーションに上げていく事に努めました。

運動会当日、まず好きなポケモンと恐竜のお弁当で喜ばせ、会場に向かわせました。
運動会が始まり、行進はなんとかOK…体操もなんとか…でも、次の親子競技で大泣きでした…。
それは【仮装】競技で、その衣裳を着たくないと泣いていたそうですが「出来たら馬に乗ろう」とお父さんと約束し、なんとか泣かずに参加(汗)。
お遊戯は…これまた年少さんの時の様に自由な位置で踊っていましたが何とかクリア(汗)。

でもお遊びはここまで。
年長さんの大きな見せ場、みんな泣きながら一生懸命練習してきた組体操と鼓隊があります。
まず、地面に座ったり寝っ転がったりが出来ないチキボンが一体どうやって皆と組体操するのかドキドキしながら観ていましたが、上手~く手や服が汚れない様ごまかしながら同じ様な事をしておりました。

お友達みんながチキボンをリードしてくれたおかげでした。
先生方も「出来ると信じてました!!」と涙ながらにお話しして下さいました。
そして鼓隊は「あれがチキボン?」という程立派な姿でした!!

太鼓の音も好きじゃないチキボンは自分のパート練習もせず全パートの練習をこっそり遠目で観ていた為、本番もいろんなパートを自由に打ってはいましたが、移動形式はばっちりで、先生も保護者もみんな涙涙でした。この成果の影で「なんでチキボンだけ練習しなくていいの?」と言うどころか、一緒に練習出来るまで待ってくれた子ども達。

チキボンの指導にご苦労されていた先生方を思うと「良くここまでして下さいました(涙)」と感謝の気持ちでいっぱいになりました。

でもまだ運動会は終わっていません。ラストに全員リレーがあります…。
足の早いチキボン。その日の気分で「今日は恐竜で走る」「今日は参加しない」、自分のチームが負けていると真面目に走る…と言った感じだったらしいです。(こども達談)

で、本番は自分のチームが勝っていたので同じチームのメンバー達がチキボンに「チキボン君、今日は人間でめっちゃ早く走ってや~」と言いっているのに大笑いしましたが、空気の読めないチキボンに身内は「これで恐竜走りしたらどうしよう」とヒヤヒヤしましたが、猛ダッシュで私達の前を走り抜ける姿にまた涙が出ました。

お友達の力は偉大ですね!
そして理解ある保護者が多かったことも有難かったです。
こうして幼稚園最後の運動会が終わりました。

この3年間、いろんな事が目紛しく過ぎ、周りに【広汎性発達障害】(軽度自閉症)である事の理解と協力を得ていっぱい成長したチキボンでしたが、小学校に行くとどうなる…という不安も隠せない【小学校編】へ続く・・・

 
 

カテゴリー: あたらしい風   パーマリンク

>> お問い合わせはこちら copyright (C) 2011 わたしのフクシ。編集部