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ノートの端っこ

割込み番外編 : 蒔田さんの本が出版されるよ!!

 
 
みなさん、こんにちはー。

蒔田さんの連載ページにおじゃまして、今回は編集部のしろくまがお届けです。

というのも、実は。
蒔田さんが新聞で連載していた「難病カルテ」が、本になりましたー!

「ノートの端っこ」の続きが届かないな~、って思ってたみなさん。
蒔田さん、この本の準備で大忙しだったそうですよ。

というわけで今回は、蒔田さん渾身のこの本について、紹介してもらいたいと思います。

それでは「ノートの端っこ」割り込み飛び込み番外編、さっそくいきましょー。
 
 
蒔田さん、よろしくお願いします!

 しろくまさん、佐賀まではるばる、ありがとう。会えてとっても嬉しいです。普段は質問する方ばかりだから、少し緊張しているけれど、よろしくお願いします!
 
 
はーい。
ではまず、新聞で連載された「難病カルテ」について教えてください。

 連載は2011年6月、毎日新聞佐賀県版でスタートしました。記事は原則、佐賀県内でしか読むことができませんでしたが、インターネット上に、ほぼ全文を公開していました。

 連載は2013年3月まで続きました。本編70回に、東日本大震災で被災した福島、宮城、岩手に暮らす患者さんたちの話を書いた「被災地編」や、連載に登場した患者さんたちによる「座談会」などの番外編を加え、計80回を数えることになりました。当初は1年を目安にしていたので、私としても、ここまで続くとは思ってもいませんでした。記者人生で取り組んだ最長の連載でした。
 
 
2年近くも続いたんですね~。
どうしてこの連載を始めようと思ったんですか?

 いろいろな理由があるんだけど、一番大きかったのは、私が「難病患者さんのことをもっと知りたい」と思ったことだと思います。

 連載のテーマは、「難病患者の日常を描く」ということでした。

 「難病」をテーマにしていると聞くと、「悲劇」「死」「感動物語」といったことイメージしがちですよね。小説やドラマでは、そういうストーリーが多いですし、私もそうでした。

 私は佐賀に赴任してから、「佐賀県難病・相談支援センター」に足しげく通うようになるのですが、そこでいろんな患者さんに出会いました。もちろん、家から自力で一歩も出られなかったり、経済的苦境にあったり、そういう患者さんたちもいるのですが、そういう人ばかりではありません。ダンスや仕事を楽しんだり、恋愛したり結婚したり、いろんな患者さんに出会ったのです。

 よく考えれば、当たり前のことです。「患者」が一様に同じ暮らしをしていることなんて、ありえないのです。

 でも、そういうことに頭が及ばないほど、私は「難病患者」を色眼鏡で見ていた、ということなのだと思うのです。患者さんたちが実際、どのような暮らしをしているのか、ということを、私はあまり知らなかった。難病患者さんたちが、普段、どんなことを考えているのか、何に困っていて、何を楽しんでいるのか。全然知らないから、凝り固まったイメージを持ってしまっているのだと思ったのです。

 そこで、「難病患者」を特別視せず、地域で生活するありのままを伝える記事を書きたい、と考え、「たっぷり記事をかける連載にしよう」と考えたのです。
 
 
テレビなどで取り上げられると、どうしても「あたりまえ」の部分がなくなって、劇的なところだけスポットライトがあたってしまいがちですよねー(みんなの受け売りだけど内緒)。
じゃあ、最初から本にまとめようと思ってたんですか?

 本を出すということは、連載開始当初、まったく考えていませんでした。意識し始めたのは、連載中に読者の方から頂いた感想です。

 記事は、インターネットでも公開していたのですが、写真はありませんでした。また、ネット上の記事は一定期間を超えると閲覧できなくなります。それもあって、連載期間中、「佐賀だけでなくて私の住んでいる地域でも読みたい」「全国版で掲載してほしい」という声を寄せて頂きました。

 私としても、「佐賀だけに限定した話ではない」と考えながら取材し、記事を書いていました。「登場している人は、たまたま佐賀で暮らしている患者さんだけど、全国各地の患者さんたちと繋がっている話なんだ」ということを意識していました。

 どうしようかな、と思っていた時、「わたしのフクシ。」の編集長、大野更紗さんに声を掛けてもらって、書籍化に至りました。
 
 
書籍化にあたって、ただ記事をコピペしたんじゃなくて、たくさん準備されてたって聞きました。 どんなことをしてたんですか?

 本としてまとめるために、すべての記事を書き直しました。新聞記事では、1人分を約1000字でまとめていましたが、書ききれなかったエピソードも多かったのです。

 連載をベースにしていますが、一度連載を読んだ方でも、新しい発見があるようにしたつもりです。書籍として掲載を許可してもらえなかった方もいるのですが、それ以外の方は何らかの形で再取材しました。このため、連載終了から出版まで約1年を費やすことになりました。

 残念なことに、記事掲載後、亡くなってしまった患者さんも3人います。本では、亡くなった方の家族に話しを聞き、「その後」の話も書いています。

 また、書籍化のきっかけをつくってくれた大野さんが「解説」を書いてくれました。私が書けなかった最新の情報や、本の「つかいかた」を説明してくださっています。必読です。
 
 
つ、つかいかた! そうかー。難しかったらどうしよう・・・。
この本、どういう人に読んでほしい、とかありますか?

 そうですね。難しい本、と感じてしまうかもしれないけれど、難病のことをまったく知らない人でも手に取ってもらえるように注意して書いたつもりです。

 もちろん、治らない病気を抱えている人、その人を支えている家族や支援者の方にも読んでほしいのですが、「難病についてまったく知らない人」にも読んでほしいです。私自身、難病のことをほとんど知らず、「もっと知りたい」という気持ちから、取材しました。ですから、この本が、どこかで誰かの「きっかけ」になってほしいと願い、書いたつもりです。
 
 
きっかけ・・・。「ノートの端っこ」の第一回(こちら)にも、「きっかけ」という言葉が出てきていましたね。蒔田さんにとって「きっかけ」はとても大切な言葉なんですね。

ところで、転勤されるって聞きました!!

 そうなんです。この春に、4年を過ごした佐賀を離れることになりました。

 新しい赴任地、茨城県は、大学時代に4年間過ごした場所です。ただ、当時は大学のあるつくば市や、一時的に暮らした取手市周辺でしか過ごしていませんでした。ですから、まったく知らない土地で働く、という気持ちでいます。

 佐賀を離れるのは、とてもさみしいです。記者になって、最も長い時間を過ごした場所ですし、出会った人との思い出もたくさんあります。

 記事を通じて、佐賀のみなさんにも近況報告できるよう、がんばりたいと思っています。
 
 
twitterみてるみなさんの「いや、もう既にがんばりすぎだから。」という声が聞こえてくるようですけど~(笑)。 どんなことをがんばりたいと思っているんですか?

 私は記者になるとき、一つだけ、目標を立てました。それは「退職するまでに一冊の本を書く」ことです。思いもよらず、記者10年目を迎える年に達成できてしまい、現時点で「これ!」という目標はありません(「ノートの端っこ」は、もう少し更新できるようにはします……)。

 連載、書籍化を通じ、「社会で声を上げにくい人たちの声を、どう届けるのか」ということを、今まで以上に考えるようになりました。今後も、このテーマを意識して仕事をするつもりです。これまで取り組んできた難病や障害などについては、継続的に取材するつもりですが、新しい挑戦もしてみたいと思います。

 「わたしのフクシ。」や「難病カルテ」で記事を読んで下さった方々に、「あ、蒔田がまたおもしろいことをしているな」って思ってもらえるよう、精いっぱい取り組みたいと思っています。
 
 
ありがとうございましたー。
 
 
 難病カルテ ーー 患者たちのいま
 蒔田備憲(毎日新聞佐賀支局記者)【著】
 生活書院
 http://www.seikatsushoin.com/bk/119%20nanbyokarute.html
 
 

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蒔田備憲

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